「よろしく」と「がんばって」を英語にする

今回は、英訳についてのかんたんなコラムです。コラム、というほどのものでもありませんが。

私は基本的に英語→日本語の翻訳のみを受けています。
ですが、社内翻訳者だったころは日本語→英語がほとんどでした。
海外とのメールのやり取りが多く、上司や同僚から持ってこられた文面を淡々と英語に翻訳することが多かったからです。
そこに書かれるとまず面食らってしまう言葉が「よろしくお願いします」でした。
これほど文脈によって左右される表現もありません。
同じ「よろしく」でも、たとえば初めてのメールで自己紹介した際は「これから仲良くしてね」という意味になるでしょうし、相手に何かを頼む内容のときは、それに対する念押しというか、お礼というか、そういうニュアンスが必要ですよね。
まあ、翻訳するのは私だし、その意味さえこもってればいいんでしょ、ということで、割り切ってやらせていただきました。
幸い事細かにチェックして「『よろしく』がない!」と言ってくる人はいませんでしたが。
勝手なことに、「もっと翻訳しやすく、シンプルな日本語で書いてきてくれないかなあ」と思ったものです。本当に勝手。

がんばってください!

時はさかのぼって、中学3年生の私の話です。
当時とある英国のバンドに夢中になっておりました。
彼らが来日公演をすることになったのですが、私は残念ながら行くことができなかったので、日本で行くと思われるところあてにファンレターを書くことにしました。
往復ハガキの往信面に熱い想いをしたため、返信面にサインを書いて送り返してもらおうという目論見でした。
当時のアイドル(ジャニーズ?)ファンがよく使っていた手法と記憶しています。
とりあえず日本語で下書きをして、それを英訳したのだと思いますが、英検4級(当時)の私にはハードルが高い作業でした。
たまたま音楽誌に「ファンレターの書き方」という記事があり、それを参考にしながら一生懸命書いて、〆の言葉で詰まりました。
私の下書きには「では、がんばってください」とあります。
ファンレターの書き方には出てこない表現でしたし、とりあえず和英辞書で調べました。
そこにはcheer upとありましたが、逆引きすると「元気を出して」というようなニュアンスです。ファンレターだし、慰めるつもりはないのに…
結局何と書いて投函したかは記憶がないのですが、もしかしたらcheer upだったかもしれませんし、work hard(「一生懸命働け!」)だったらどうしよう、と、今になって青くなっています。
日本語では気軽に「がんばって」と言いがちですが、その奥にもいろいろな意味がありますよね。
この場合一番近いのは「ますますのご活躍をお祈りします」のニュアンスに一番近い「がんばって」かもしれません。
10枚出したうちの1枚がサイン入りで戻ってきたので、変な英語でも怒らせてはいなかったのかな、と胸をなで下ろしました。

「よろしくお願いします」に悶絶していたころ、自腹で買ったこの本で乗り切りました。

第2版が出ていたのですね。私のは第1版だと思います。

日本語だと気軽に使いがちな言葉も、英語にすると難しかったり、またその逆もあります。
英語だとdeserveという言葉にはいつも悩まされます。
辞書を開けば見つかるのは「~を受ける値がある」だとか。一瞬どういう意味だろう?と考えてしまいませんか?
そういったことを少しでもわかりやすく表現するため、翻訳者さんたちは日々せっせとがんばっているのです。
私も端っこのほうで…

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